DX戦略

【スマートドライブ 北川氏 × オプトデジタル 野呂氏 】 企業のDXを支援する両代表が語る、DX で成功する企業・失敗する企業

移動にまつわる様々なセンサーデバイスを通じて収集されたビックデータを活用し、モビリティ領域において数多くの企業のDXのサポートを行なっている株式会社スマートドライブ。今回、代表取締役の北川烈氏と、同じく顧客接点変革の側面から企業のDXを支援するシステム開発を行う株式会社オプトデジタル代表取締役の野呂健太氏が対談を実施。スマートドライブの事業、MaaSが普及することで起こる未来、そして二人が携わる企業のDX 支援において、成功する企業・失敗する企業の違いについて伺いました。

ざっくりまとめ

・スマートドライブの事業は移動にまつわる業務プロセスのDXサポート、事業創出、オープンプラットフォームでのデータ提供の3つ。
・DX成功にはフェーズを区切り、ステップを着実に進めることが大切。
・「全部自社でやる」のはNG。スピーディーな開発を。
・MaaSの普及は周辺業界のビジネスモデルも変えていく可能性がある。

DXにより効率の良い車両管理や、安全な運転環境の整備を実現

野呂:まずはスマートドライブ社の事業内容について改めて教えてください。

北川:大きく3つあります。

1つ目は企業の移動にまつわる業務プロセスのDXサポートをSaaSのプロダクトで行う事業です。例えば営業車の位置情報をリアルタイムで把握できるようにし、ドライバーへより的確な指示が出せるようにしたり、走行履歴などを見える化することで、事故を減らす効果的な対策を考えられるようにしたりしています。

2つ目は我々のPlatformに集まる移動にまつわる様々な情報や、我々で提供している各種分析結果などのAPIを利活用しながらお客さまと新しいサービスを一緒に作る事業です。野呂さんが以前いらっしゃった損保ジャパンさまとも連携し、お客さま一人ひとりの移動リスクに応じた新しい保険やサービスの共同開発を行なったりしました。

3つ目は、集めたデータを蓄積・分析するオープンプラットフォームの提供です。お客さまがデータを活用して何かをしようとする場合、情報を簡単に取得し活用できる会社とそうでない会社があり、一言で情報と言ってもに偏りがあります。弊社プラットフォームを使っていただくことで、多様な企業からまんべんなく集められ、活用できるようクレンジングされた情報にアクセスできるというメリットがあります。

野呂:企業のDX推進の中で、いくつか象徴的な事例を教えてください。

北川:わかりやすい事例としては、営業車両を使っている地方の会社さまにサービスを導入いただいたものがあります。もともとデータ活用ができておらず、営業担当が仕事終わりに毎日会社に戻り、運転日報を書かなければならない状況でした。

それが、弊社サービスを活用いただくことで、自動で移動経路などが記録されるようになり、毎度手書きで運転日報を書く手間を削減できるようになりました。それによって、営業マンが直行直帰できるようにもなりました。さらにその会社さまは、データを元に、効率の良い運転や安全運転をしている営業社員の表彰を行なったりもしています。

実際に業務が効率化され、1日で回れる営業先が2件増えたそうです。また、従業員の自動車事故が3割減ったという声も伺っています。


より発展的な事例として、世界的メーカーであるホンダさまには、デリバリーなどで利用される商用二輪車にセンサーを取付け、そこから取得した走行データを活用した車両管理や運行状況の管理を行うシステムを提供しています。まずは、電動二輪車である「BENLY e:(ベンリィ イー)」に搭載(オプション)され、運転手が今どこにいるのかが管理画面上で一目で見え、配送の効率化などを図れるようになっています。

野呂:御社のサービスはSaaSとして提供されているからこそ、「まず導入してみよう」と動ける会社さまが多いのかもしれないですね。どうしてもお客さまが内製で開発する場合、コストや期間、そもそものノウハウの問題もありハードルは高くなってしまいます。DXを推進したいなら、御社のような会社を上手に活用していくのが良いと思います。

DXが失敗する典型例とは

野呂:御社のサービスの導入理由はどういった動機が多いのでしょうか?

北川:お客さまのDXは、我々の便宜上の表現ですが、「1.0」「2.0」「3.0」と大きく3つのフェーズで進んでいくと考えていて、それぞれの段階で動機も異なります。

「DX1.0」は業務プロセスのデジタル化を果たした状態で、この状態を目指してサービスの導入をご検討いただくお客さまが一番多いです。例えば、これまで紙でやっていた乗務記録をデジタル化するといったサポートを行います。

「DX2.0」は集めたデータを活用するフェーズのことです。例えば営業車両の配車プランを改善し、一日の訪問数を増やすサポートなどが求められます。

そして「DX3.0」は機械学習を活用して予測値を出すフェーズです。社内ではすでに3.0のフェーズに入っていて、データを元に事故の確率の予測などを行なっています。ディープラーニングやマシンラーニングの技術を使えば、あらゆる予測がかなり先まで可能になることが分かってきています。

野呂:フェーズに分けて考えるとわかりやすいですね。モビリティに限らずあらゆる業界で、未だにアナログなやり方をしている会社さまは少なくありません。「DX1.0」すら実現できていない企業が多い印象です。まずはそこを目指して着手するのが大事だと思っています。

北川さんから見て、DXを1.0から2.0、3.0へと進められる企業とそうでない企業との差はどこにあるのだと感じますか?

北川お客さまと話す中で感じるのは、まだ1.0もできていないのにいきなり3.0に取り組もうとして失敗するケースが多いことです。まずはデータを活用し、今の状況を可視化することが大事で、その上でどう課題解決をするか考えないとうまくいきません。うまくいく会社さまはフェーズを区切り、必要なステップを飛ばさず着実に進んでいく会社さまです。

野呂:確かにそうですよね。一方で私がレガシー企業でDX担当者として取り組んでいた経験から生々しい話をすると、会社の中で1.0の予算を確保するためには、2.0、3.0までゴールを描く必要があります。最終的にこのDXプロジェクトでどんな世界を実現するのかが、企業の経営層には一番共感を得てもらえるポイントだと思いますので。全体のビジョンを描いた上で、最初のステップとして1.0に取り組む、という進め方が必要なんだろうなと思います。

特に2.0以降のデータ活用のフェーズに進むためにも、1.0でちゃんと使えるデータを活用できる形で蓄積していくことが重要ですよねDX1.0のお客さまをサポートするうえで、心がけていることがあれば教えてください。

北川:お客さまの課題を正しく分析し、AIなどのIT技術だけでなくBI(ビジネス・インテリジェンス)を活用することです。場合によってはシステム開発をせずお客様の課題を解決できることもあると思っています。システム開発ありきで考えてしまうと「結局何がやりたかったんだっけ?」となってしまうケースがあります。手段にこだわらず、ビジネスの仕組み自体で解決できるものはしていこうと考えています。

「全部自社でやる」はNG。「ありもの」を使ってスピーディーなシステム開発を

野呂:モビリティの分野において、企業がDXを進めるには、具体的にどのように進めていくのが良いでしょうか。

北川:全部自社でやろうとしないことです。必要なプロセスが10あるのなら、1から3くらいまでは、すでに出回っているプラットフォームなど、「ありもの」を活用すると良いと思います。4から10で自社独自の技術を活用するイメージです。

とくに大企業には、1から自社で開発しようとこだわって、要件定義から含めると完成まで3年もの時間をかける、といった会社さまが多いです。スピーディーな開発を実現するには、本当に自社が大事にしている部分だけ自分たちで開発し、残りは出回っているプラットフォームを活用するという考え方が良いと思います。

野呂:まったく同感です。特に競争意識が強い業界では各々の会社が独自で同じようなサービス、システムを作ってしまっているケースは多いと思っています。私がDXを手掛けた金融業界もそうでした。場合によっては他社と協力しながら業界共通のプラットフォームを一緒に利用することで、開発費用も時間も節約できるのだと思います。DX施策でも競合領域と非競合領域を明確に分けていけると良いのではと考えています。

そのためには自社、業界を過去のしがらみもなくフラットに見られるDX担当が必要ですね。手っ取り早く中途採用のデジタル人材にその役割を担ってもらう手もありますが、外から来た人は、その会社の文化を知らず、現場やプロパーとの乖離が起こりやすいのですぐに立ち上がるのは難しかったりします。自社のサービスをフラットに分析し、最適なソリューション(手段)を選択できる人材を育てることはDX推進におけるポイントだと思います。

MaaSの普及は、周辺業界のビジネスモデルを変える

野呂:昨今、新型コロナウイルス感染症の流行が、多様な業界に影響を与えています。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の分野にはどのような影響があったのでしょうか?

北川:データを見ると、人の移動は減っていますが、物の移動が増えてきていて、移動の総量自体はそんなに変わっていません。おそらく、この状況はこれからも大きくは変わらないだろうと思っています。

そのうえで、大きく分けて2つの変化があったと思っています。まず1つは、業界全体が自動車メーカーをはじめ売上的に大きな打撃を受けたために、R&Dなど10年先、20年先を見据えた投資額が減っていることです。

もう1つは、新しいサービスがどんどん増えているということです。通勤時にコロナに感染したくないというニーズから、会社に専用のカープール(自動車を相乗りすること)を提供するサービスが生まれたり、タクシー会社が提供する買い物代行サービスが生まれたりなどしています。

MaaSが普及してくると、これまでBtoCだったビジネスがBtoBへ変化する可能性もあると思っています。例えば、いま消費者は、自分の車を持っていなくても、アプリを使って簡単にタクシーを呼び、移動できます。そうなると、ユーザーにとって乗る車の車種は何でも良くなります。また、その移動手段がどのガソリンスタンドや駐車場を使っているのか、どの自動車保険に加入しているかなども意識しなくなるでしょう。すると、自動車メーカーや保険会社のお客さんが、一般消費者からMaaS事業者へと変わっていくのです。

データ収集と提供サービス充実のサイクルを回す

野呂:最後に、今後の展望を教えてください。

北川:会社としては引き続き、冒頭にお伝えした3つの事業領域に力を入れていきたいです。いろんな企業に我々のサービスをご活用いただくことで取得できるデータも増え、活用できる範囲も広がっていきますので、さらに新しいSaaSをお客さまに提供できるようになっていきます。

関わるお客さまやパートナーの数が増えることで、我々をハブにして、これまで関わりのなかった企業同士を繋げることもできます。プラットフォームだけ、SaaSだけと特定の領域に偏らず、まんべんなく今取り組んでいる事業領域に力を入れ、データの収集から企業同士の連携創出までつながっているサイクルを強化したいと思っています。

また、移動に限らず、駐車場などプラスアルファ領域の情報も積極的に収集し、我々が関わる領域を増やしていきたいと思っています。その際は自社で情報を集めるだけでなく、場合によっては他の会社さまと連携していければなと思っています。

データやSaaSをはじめ、いろんな会社さまに使っていただくサービスと、新しい技術やサービスを生み出す会社さまを支えるサービスとを明確に分けて考えていて、その両輪をしっかり回していきたいです。

これからも、ビジョンに掲げている「移動の進化を後押しする」ため、より多くの形でお客さまのサポートをしていければと思います。
北川 烈 氏
株式会社スマートドライブ 代表取締役

慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。その中で今後自動車のデータ活用、EV、自動運転技術が今後の移動を大きく変えていくことに感銘を受け、在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。
野呂 健太 氏
株式会社オプトデジタル 代表取締役

大学院卒業後、2011年株式会社NTTドコモに入社。経営企画部門にて事業計画立案に携わる。その後dポイントの立ち上げ、プロモーションを経験。2017年より損害保険ジャパン日本興亜株式会社(現:損害保険ジャパン株式会社)にて新規サービス創出に取り組み、「LINEによる保険金請求サービス」「SOMPO AI修理見積」においてプロジェクトリーダーとして企画を立ち上げる。その他在籍3年弱で約20のプロジェクトを世に送り出す。2020年、株式会社オプトデジタルの設立とともに代表取締役に就任(現任)。

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