DX戦略

【準備期間3ヶ月、VR内定式の裏側】社内カフェスペースをVRで再現、一度も来社したことのない内定者とも仮想空間で同じ体験を。

新型コロナウイルス感染症の影響で入社式をはじめ、さまざまな社内行事をリモートで行う会社が増えています。そんな中、株式会社medibaでは、10月にVR内定式を開催。来年春に入社する内定者と社員、合わせて20名余りが自宅などからリモートで参加しました。どのように実現したのか、プロジェクトチームのメンバーであり、CXO(Chief Experience Officer)の藤原 亮氏、プロダクトオーナーを務めた白井 藍氏、デザイナーを務めた高橋 佑至氏にお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- 「VRって面白そうだな」という思いつきからプロジェクトがスタート
- 「会社の雰囲気が分からず不安を感じる内定者に安心感を与えたい」という想いからVR内定式を実施
- 内定式を成功させるため、事前にチュートリアルの時間を設け、参加者にはVRに慣れてもらった
- VR内定式により社員の歓迎の気持ちが内定者に伝わり、会社理解の一助になった
- VR内定式実現の鍵は運営側のファシリテーション能力。いきなりやろうとせず、小さく始めてVRの体験からスタートすると良い

過去に事例がない中、思い切って挑戦したVR内定式。背景には、内定者の不安を和らげたいという想い

ーVR内定式実施の背景を教えてください。

藤原:もともとは、コロナの影響で大人数で集まれなくなった弊社カフェスペース「8cafe」を仮想空間上で再現し、そこに社員がアバターを介して集まると面白そうだなという思いつきからスタートしました。私がSlackで「VR空間でカフェスペースを再現してみませんか?」と提案してみたんです。すると、スタンプで「いいね」がいっぱいついて、だったらやりましょうということでプロジェクトチームが発足。社内のイノベーション文化を作っている創造推進ユニットが主体になり、有志を集めた部署横断型のプロジェクトチームが作られました。2020年7月のことで、内定式まであと3か月というタイミングでしたね。

2ヶ月ほどして、PJメンバーもVRに慣れてきて、プロトタイプも出来上がってきたところ、毎年8cafeで行われていた内定式がビデオ会議になるという話があり、それはなんだか味気ないなと思っていたところ、代表の江幡から代表から「VR空間で内定式できない?」というオファーがあり、メンバーとも相談して面白そうなのでやってみようとなりました。この時点で、内定式まであと1ヶ月というタイミングでした。    
内定者にとっては、コロナの影響でなかなか会えず、つながっている感がないのかなと思っていました。東京以外にお住まいの人もいて、面接も全てリモートで終わってしまった人もいました。一度もオフィスに来たことがないのに入社をするというのは、やっぱり少し不安もあるかと思います。また、内定者の皆さんは同期とも会えていない状態でした。そこで、たとえバーチャルであっても、ひとつの空間で皆が同じ体験をすることで、少しは不安が和らぐのではと考えたのです。

気軽につくったVRを社内の公式イベント用に昇華。細かい検討事項を一つずつ潰す

ー内定式までどのように準備を進めたのでしょうか?

白井:VR自体はもともと内定式用というわけではなく、先行分野の技術を小さく作って試してみよう、という意図でプロジェクトを動かしていました。内定式の話が持ち上がったタイミングでは、会社としてオフィシャルな場で使うつもりではなかったので、イベントで活用するにあたり、どんな順序で何が必要なのか考えるところから始めました。普通のスペックのPCだと動かなくなったり、ネット回線がパンクする可能性があったりしたので、参加者一人ひとりのPCや回線を確認するといった小さな作業も検討項目の中に入れました。スペックが足りない場合、PCの貸し出しができるのかと対応を考えていきました。

内定式参加者のほとんどがVR初体験だったので、その操作についてのレクチャーも大変でした。事前にチュートリアルを行う機会を設け、当日は何とかスムーズに進行できました。

会社に来たことがない内定者にも、安心してもらえるために。「HAPPY」を生む空間づくりで、会社の理念の体感を

ー当日は、会をスムーズに進めるために何に気をつけたのでしょうか?

白井:VR空間に入るのにも時間がかかりますので、事前にVR空間にログインしてもらいました。内定式が始まる1時間前には内定者の方に先に入っていただき、その30分後には経営幹部に入ってもらうなど、段階を踏みました。そのおかげで時間ぴったりに始められました。

また、VR空間内では音声が途切れるなど聞き取りにくい場合があることわかっていたので、Zoomにも同時に入ってもらい、Zoomを介して指示を出すようにしていました。

ー実際にVR内定式をやってみていかがでしたか?

高橋Zoomと違って内定者や経営幹部のリアクションが伝わりやすく、会社の明るい雰囲気が伝えられたのが良かったなと思います。VR空間では参加者一人ひとりにアバターが割り当てられますが、そのアバターの上にびっくりマークが出たり、効果音が出たりして、それぞれの感情を表現できます。

また、準備段階でも内定者同士や内定者と社員の間でコミュニケーションがあり、それぞれの人柄が分かったことも良かったのではないかなと思います。内定者とも一緒にプロジェクトを作り上げているのに近い感覚でした。
白井:私は内定者と式の前に面談をしており、オンラインで彼らの不安を聞いていました。一度もオフィスに行ったことがなく、漠然とした不安を抱えているとのことでした。何かできることはないかなと思っていましたが、面談時は「大丈夫だよ、入社したら一緒にご飯に行こうよ」としか言えませんでした。

それが今回の内定式で「迎えて貰えた感がある」「一緒に楽しく過ごせた」と言ってくれたのを聞いて、これまで自分が伝えたかったことが伝わったのだとうれしくなりました。

私の場合は何度も会社に行き、いろんな方とお話をしてこの会社に入りたいと思い、入社をしました。せっかく私達の会社を選んでくれた内定者に、何か返したいという気持ちがあって、今回は少しでもそれができたのかなと思っています。

藤原: 我々は「ヒトに“HAPPY”を」という理念を掲げていて、そのためのサービスをデザインする会社です。この先、VR、AR、xRというテクノロジーは必ず活用されるようになると考えていたのですが、実は最初はARの方が注目度が高かったんです。ただ、コロナで急にVRが注目を集めるようになり、それで一気に研究対象をVRに切り替えたという背景がありました。

内定式を通じて、我々の理念を体験してもらいたかったですし、立場を越えて自分たちで空間をデザインして体験を作るのだということを感じてほしいと思っていました。そういう意味では、良い機会だったのかなと思っています。

白井:アンケートの回収もしていて、参加した内定者からは「内定証書を頂いた際に社員の方々からのリアクションをいただき,身が引き締まる思いになりました」「社員の方々が和気あいあいと進めてくださったことで自分達だけではなく、多くの方が内定式のために準備してくださったことをより実感できた時間でした」といった声をいただけました。我々が提供したかった体験を届けられたのではと思っています。

VRの活用はまず実際に体験するのが有効。イメージだけで実施を決めるのは危険

ー次回もVR内定式をやるなら、何をブラッシュアップしたいですか?

高橋:今回はステージをつくり込みましたが、アバターのつくりこみにもチャレンジしたいですね。          
内定式では社長 江幡のアバター(エバター)を作ることを目指しましたが、既存のアバター作成サービスではうまく表現できず断念したので、次回は何らかのアバターを0からモデリングしてリベンジしたいと思います。
                       
藤原: 内定式は失敗できないと思ったので、参加者には動きを制限してもらっていたのですが、VR でしかできないような、机の上に立ったり壁を歩いたりといった動きを自由にしてもらっても良いかなと思っています。

ー今後はVRを軸にサービスの展開をしたりするのでしょうか?

藤原:具体的にはまだ考えていません。社会やユーザーの声を聞きながら決めようと思っています。

ー他の会社がVRを使ったイベントの開催などする際、気をつけるべきことはありますか?

藤原:実際に沖縄支店からVRを使ったイベントを開催したいと相談が来ていますが、まずスペックがあるか、は気にして欲しいポイントです。せっかくシステムを導入しても、動かない可能性がありますので。

また、アバターのファシリテーションはすごく大事です。少し操作を間違っただけで、とんでもない方向に動いてしまったりしますので。曖昧な指示は出さないようにして、誰にでもわかるように「ここに立って下さい」と伝える必要があります。

白井:確かにファシリテーションは非常に大事です。VR空間に不慣れなメンバーに操作してもらったり、「顔を正面に向けてください」といった指示出しを言葉だけでうまくできるように準備したりしなければいけません。そのためには、いきなり本番の環境をつくるのではなく、まずは小さくやってみながら学ぶことが重要です。

VRと聞くとどうしてもイメージが先行してしまいがちです。ほんの少しでも体験すれば、どういうものなのかリアルに分かるので、現実的な企画が立てられます。やってみようと思われたら、いきなり挑戦する前にまずはVRを体験してもらえればと思います。
藤原 亮
株式会社 mediba CXO(Chief Experience Officer)

パッケージ、コンサルティングファーム、スタートアップを経て、2006年にYahoo! JAPAN入社。スマデバ戦略室クリエイティブディレククター兼黒帯アプリUIとして全社改革を推進。通信キャリア立ち上げ、会員、映像、コマース事業にてUX戦略室長を担当。2019年10月より株式会社medibaでCXOとしてUX戦略、クリエイティブセンター組織マネジメント、5G/xR領域を担当。
白井 藍
株式会社 mediba ビジネスセンター 創造推進 UNIT

青山学院大学を卒業後、2011年に株式会社mediba入社。
広告営業、人事、広報を担当した後、現在は新規事業企画・推進プロジェクトに携わる。社内のイノベーション文化を創造するコミュニティを運営する中で、本プロジェクトに参画。プロジェクト全体の管理と推進を担当した。
高橋佑至
株式会社 mediba クリエイティブセンター UI2G

立教大学卒業後、2018年に株式会社mediba入社。
UIデザイナーとして「au占い」を担当し、現在は「auスマートパス」のUI作成、改修に携わる。自主制作アニメーションの制作に興味を持ち、趣味で3DCG制作を始めた延長で、今回のVR内定式プロジェクトに参画。ゲームエンジンやVRプラットフォームについて学びながらバーチャル空間を作成。

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