【Society5.0】注目サービス Vol.7 エネルギー・住宅設備
2021/7/14
センサーやIoT、AIといったテクノロジーを活用し、データを集積した仮想空間から高付加価値を現実空間にフィードバックすることで、さまざまな社会的課題解決を図る「Society5.0」。その取り組みを業界別に紹介する連載シリーズ。第7回目では、エネルギーの効率的利用や住環境に技術を活用しているサービスをご紹介します。
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これまでのSociety5.0関連記事
エネルギーの安定供給、環境負荷の軽減に貢献するAIやデジタルシステム
EMS(エネルギーマネジメントシステム)関連サービス
温湿度やCO2センサーの収集データをAIが分析し、空調設備を最適制御するビルや集合施設向けのシステムで、ビルマルチエアコンのほか中央熱源方式にも対応。間欠運転制御や室外機の容量制限制御を行うことで、10~30%の消費エネルギーの削減が見込めます。東京大学発のベンチャー企業、株式会社Mutronと協業して開発。月額制を採用することで、一度に大規模投資をすることが難しい不動産管理業者にとっても導入しやすいサービスとなっています。
自宅のエアコンを自動で遠隔操作「省エネIoTサービス」(株式会社Momo/株式会社環境エネルギー総合研究所)
気象情報や室内データの分析結果を活用し、居室のエアコンを遠隔操作するサービスを開発。電源コンセントに差し込んだIoTデバイスと室外機周辺の温湿度センサーによりデータを取得。収集データと気象庁による気象データを企業側でAI分析し、スマートリモコンに指令を出す仕組みです。2020年よりサービス付き高齢者住宅“ミライエ知立山屋敷”にて実証実験が行われており、空調費を最大40%削減することが期待されています。
一般家庭で簡単にエネルギーマネジメントができる「Nature Remo E」などを展開(Nature 株式会社)
スマートフォンからあらゆる家電を操作できるスマートリモコン「Nature Remo」、手軽に家庭でのエネルギーマネジメントが実現できる「Nature Remo E」などを提供。『エネルギーを自給自足できる未来』を目指し、近年は電力供給サービス「Natureスマート電気」も展開しています。
HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を活用し、賃貸向けに最適化した住宅「賃貸ZEH(ゼッチ)」(積水ハウス株式会社)
太陽光発電やエネルギー管理タブレットの活用に加え、断熱などの省エネ素材を併用することで1次エネルギー消費収支ゼロを目指した住宅。賃貸住宅向けに特化していることが特長で、光熱費を大幅に削減できると同時にCO2排出削減などにも寄与しています。
再生エネルギーの利活用
太陽光パネルを無償設置し、太陽光で発電・蓄電した電気をおトクな料金で顧客に供給するシステム。住民側には設置・運用コストがかからず、メンテナンスやトラブル時の負担がないことが最大のメリット。また、発電された電気を格安で利用できるため電気代削減につながります。一方、沖縄電力側は確実かつ効率的に電気を販売すると同時に、余剰電力を安く買い取れるというメリットが生まれます。基本契約期間は15年で、初回申し込みはあっという間に枠が埋まるほどの人気だったそうです。
プラットフォーム関連サービス
顧客がお気に入りの発電所を選び、毎月の電気料金の一部をみんな電力経由でその電力生産者に寄付することで支援ができます。電力供給の90%以上を再生可能エネルギーが占めており、料金メニューの原価構成を透明化することで、環境意識の高い顧客への訴求力を高めています。ブロックチェーン技術を活用した電源トラッキングサービスの開発・展開など今後に向けた事業も進めているそうです。
電力小売プロセスを自動化するプラットフォーム「パネイルクラウド」(株式会社パネイル)
電力小売が全面自由化される以前、その業務プロセスの多くは手作業が主流でした。その業務をAIとビッグデータを用いて自動化したことで、劇的なコスト削減を成功させた仕組みが「パネイルクラウド」です。2018年4月には東京電力エナジーパートナーと共同で合弁会社「PinT」を設立し、関東エリアから全国へのサービス提供を本格化すると同時に、不動産会社向けに複数物件の電気料金を一括支払いできるサービスを提供するなど、付加価値を付けたサービスにも着手しています。
エネルギー効率化のためのシミュレーション・解析技術
JFEエンジニアリングとともに、ダムへの水の流入量をAIで予測するシステムを開発。高精度で水の流入量を予測・最適化することにより、水力発電電力量を増加させることが可能で、浅井田ダム(岐阜県飛騨市)で実施された実証実験においては年間約500万kWh(約1,600世帯の年間使用量に相当)の増加が見込まれたそうです。
生産工場のエネルギー収支を独自評価する「ZEF」(大成建設株式会社)
エネルギー消費量をゼロ化することが難しいといわれる生産工場において、エネルギー収支ゼロを目指す独自評価軸「ZEF(Net Zero Energy Factory)」を新たに定義。評価対象範囲や設備を拡大するとともに、生産機器の稼働状況や人員状況に合わせて照明や空調、換気をリアルタイム制御。さらにエネルギーデータを常時取得してクラウド管理。エネルギー使用状況に基づいた運転・運用改善提案を行うことで消費エネルギー削減を目指しています。
電力システムのあり方をあらゆる角度から検証・提言(日立東大ラボ)
日立製作所と東京大学によって2016年に設立。電力を中心としたエネルギーシステムの技術的、政策・制度的課題の検討や、シナリオなどの研究、提言を行っています。ラボではSociety5.0に向けたビジョンとして、地域社会ごとの特色のあるエネルギーシステムを描いており、そのための技術革新と制度整備を進めるべきと述べています。
AIによるエネルギー消費の効率化を図る「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」(日本電気株式会社)
個人住宅や小規模企業にも発電システム・蓄電池の供給が進む中、それらを効率的に集約し、需給を調整することが新たな課題となっています。その課題に対し、クラウドやAIを活用することで複数の契約者(エネルギーリソース)を束ね、一つの発電所のようにリソース制御する仕組みがこのサービスです。これにより、需給調整市場で取引される調整力として機能し、エネルギーの有効活用をサポートしています。