日本企業に求られているデジタルトランスフォーメーションとは?

今日本で進められているデジタルトランスフォーメーションって何?推進しなければならない原因と理由とは?IT化との違いは?DXを行うための方法もご紹介!DXを行うときに役立つテクノロジー、最後はプロジェクトを進めるための開発方法もご説明します。

デジタルトランスフォーメーションとは

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業がITの進化に伴って組織やビジネスモデルの変革を行い、働き方改革や価値提供の方法、社会そのものを抜本的に変えていくことにつなげていくことの総称です。DXを最初に提唱したスウェーデンのエリック・ストルターマン氏は、目覚ましく進歩するITが「人々の生活をあらゆる面でより豊かに変化させること」が、DXの概念であるとしています。最近はデジタル改革への国全体をあげての取り組みとして話題になっていますが、よくわからないという方も多いことでしょう。デジタルトランスフォーメーション(DX)の考え方や具体的なアプローチ、企業における成功事例などを紹介します。

なぜ略称はDXなのか

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称はDXです。一見、英語のスペルを見るとDTとなるような気がするのですが、どうしてDXとなるのでしょうか。理由はTransという言葉にあり、「○○を横切る」「○○を超える」という意味を持ちます。Transと同義語とされているのがcrossという言葉で、crossを視覚的に表しているのが"X"で、省略して表したいときに使用されます。その延長線上で、transを表すときにも"X"が使われるようになったのです。

IT化とDX化は違うの?

つい数十年前、「IT化」という言葉が世の中に生まれ、企業がIT化を推進し働く人々はそれに適応してきました。「IT化」は日々の業務を効率化させることを"目的"としてデジタル化を進めてきましたが、「DX化」はITを活用してビジネスモデルや組織を変革していくことで、最終目的は「企業の競争優位性を確立すること」です。つまり「IT化」と「DX化」の違いは、前者が業務効率化などを「目的」として、情報化やデジタル化を進めるものだったのに対し、後者はそれを「手段」として変革を進めいくことなのです。

なぜ今DXが重要なのか

経済産業省が2019年12月に発表した「DX推進ガイドライン」にて定義された内容をまとめると、「ITを活用しながら変革を行い、企業としての競争優位性を確立すること」がDXです。世界中でも、DXを推進することで成果を上げている企業はわずか5%といわれています。少子高齢化のあおりを受けて労働人口が減少し続けている日本では、不足しているIT人材の穴埋めや海外市場も視野に入れたビジネスモデルの改革をしなければ発展が望めません。日本の企業でも早急にDXの推進が求められています。その3つの理由をご説明します。

理由1 デジタル化に伴うビジネスの多様化

1つめの理由はビジネス環境の激しい変化です。Amazonが巨大なプラットフォームを生み出して本やCDをオンラインで買えるようにし、Uberはアプリやwebサイトを通して一般の登録ドライバーとユーザーをつなぐことに成功しました。今までの価値観を覆し、新たなライフスタイルを人々にもたらすようなビジネスが次々と生まれていく中で生き残るために、DXの推進が不可欠だと考えられています。

理由2 既存のITシステムの老朽化

2つめの理由は、社内システムなどのカスタマイズを繰り返した結果プログラムが複雑化し、過去のシステム担当が退職したりなどでシステムの全容が把握できなくなっている状態にある(ブラックボックス化)ことです。これが原因で新しい事業に参入できない・保守、運用のためにコストがかさみ、DX推進を阻んでいると指摘されています。

理由3 消費者の変化

3つめは消費者行動の変化です。近年は消費者の多くが商品自体を買うことよりも、商品やサービスを購入することで得ることができる体験の"質"を重要視するようになってきました。企業はこの流れにも対応して消費者に、購入することで得られる価値のある体験を与えられるようなビジネスモデルを構築しなければなりません。そのためにはシステムはもちろん、組織全体も見直す必要があるのです。

早急な対応が求められている。

経済産業省の報告によると、これまでの日本の古い基幹システムとIT人材の不足による経済損失が2025年~2030年の間に年間12兆円ほど生じる見込みだといいます。これは2020年現在の3倍の損失となり、このままでは世界的なデジタル競争の敗者になってしまうということです。

企業にとってのDX

経済産業省は、2018年にDXを推進するためのガイドラインを取りまとめました。DXはただ単に提供するサービスや製品を変えていくのではなく、企業文化までも変革する勢いで取り組む必要があることが示されています。「データとデジタル技術を活用して社会のニーズを基に製品やサービスの変革を行い、競争上の優位性を確率すること」に加え、企業として安定した利益を得られるようにすることが企業にとってのDXになるのではないでしょうか。

企業がDXを推進するメリット

企業がDXを推進するメリットとしては、従業員体験が最も重要な要素となります。業務をデジタル化することによって効率化・生産性もUPし、単純作業に取られていた時間を削減することができます。その結果、コア業務に注力する時間が増え、より顧客の満足を意識したビジネスモデルを実現することができるようになるのです。また、経済産業省が発表したレポートによると、DXを推進したデジタル界のリーダー企業は具体的に発生したメリットとして「コスト削減」「利益向上」「顧客との関係性向上」などが実績として見られたと挙げられています。

DXを推進するためのの5つのステップ

DX推進によって、すでに恩恵を受けている企業もありますが、まだ実績や効果を感じていない企業が多いのも事実です。約4割の企業が、DX推進が最大限効果を発揮するのは導入から3〜5年後と考えているといいます。すぐに効果が出るものではなく、長期的な目線で考える必要があるといえるでしょう。そうなればなるべく早く、自社でもDX推進をスタートさせましょう。実際にDXを推進するためには大きく分けて5つの段階があります。

①デジタル化

まずは、ビジネスで使用しているさまざまなツールをデジタル化し、データを蓄積していきます。または社内で手作業やマンパワーで行っていた作業を見直し、ツール化・自動化しデータを収集してていくのも良いでしょう。具体的には、簡易的なCMSやSNSの活用、アドテクノロジーの導入などです。タクシー会社Uberを例にとってご説明しますと、今までは配車係がタクシーの空車を把握していたのに対し、クラウドやアプリによって空車情報を収集しデータ化されたことが"デジタル化"です。

②効率化

運用範囲が細かく分けられ、部門単位で運用を考ていくステップです。できることからデジタル化を進めて効率化を継続していきますが、この段階では、クライアントのことはデータを通じて考えるようになります。課題ごとにクライアントに向き合いますが、最適化にはまだ到達していない状態です。ここで活用される知識としては、ブログツールや一部のGoogleツール、JavaScriptやTagManagerの知識です。ツール選定・活用の提案や運用設計などのスキルも必要となります。

③共通化

部門をまたいでデータを活用していくための基盤を構築していきます。デジタル資産(蓄積したデータなど)を管理するDAM(デジタルアセットマネジメント)の概念を導入し、全社的に基盤構築していきます。とある部門から、ほしいデータを情報システム部門に依頼し提供されるまでに数週間かかるなどのタイムラグは競争力の低下・ビジネスの機会損失につながる大きな課題となります。このスピードを向上させるためには、情報システム部門を介さず業務部門自らがデータ分析をしてみると良いでしょう。足りない部分はシステムからもらえばよいのです。DX推進部門といった専門組織を設立し、スピーディに基盤を築けるようにするのもおすすめです。

④組織化

③で構築した部門をまたいで活用するための基盤を使用して、効率的な運用をするための組織作りを行います。運用体制・運用フローを明確化し、デジタル専門組織による積極的なデータ活用・仮説づくりを実施していきます。企業それぞれの目的や状況、特徴によって組織の形は異なりますが、DX推進を担当する部門の組織作りが重要である点は変わりません。DXを推進していく中で生じる運用やさまざまな問題をスピーディに解決に導くために、PDCA(Plan-Do-Check-Action)を回して取り組みを加速させていきます。

⑤最適化

DXの活用によって、事業に革命を起こしていく段階です。これまでのデータ蓄積を元に計画立て、データを活用して事業の将来を予測します。デジタル化されたツールが自社の基盤となり、それを利用して企業自体の競争力の向上や競合優位性を確立してきます。デジタルテクノロジーを基盤として企業活動を行うことで、新規事業をスタートさせたり市場拡大も目指すことができるでしょう。新たなクライアントとの関係を構築し、そこから得られる利益を把握できるようになります。

DXの成功事例

2019年4月、広島銀行はキャッシュレス決済企画等の部署を統合し「デジタル戦略部」を発足。同行は経営トップの指示のもと、迅速で挑戦的なDX推進の取り組みを行うべく社内体制を強化しました。「既存サービス・チャネルの見直し」、「他業態と連携して新しいビジネスを創出する」、「データの活用」3つを掲げDXを推進した結果、完全キャッシュレスの商業施設「よかど鹿児島」の開店に合わせキャッシュレス決済サービスを開始することができました。スマホ決済アプリの開発プロジェクトの体制構築を銀行内で行い、DXをサポートする部門と役割を分けて開発を行ったため期日通りにアプリをリリースし、鹿児島銀行主体で追加の機能開発をすることにもなりました。

DXを実現するためのテクノロジー

小売や流通・物流における自動化や5Gを使った遠隔医療や遠隔教育、ウェアラブルやDNA解析を活用した新しいヘルスケアなど、数多くの産業とデジタルテクノロジーの融合という大きなトレンドが動き出しています。これまでの"業界”を隔てていた壁を取り壊し、DXによる産業構造の変換を急速に推進する動きが高まっています。DXの推進をするにあたり、活用されているデジタルテクノロジーがいくつかあります。ニュースやメディアでもよく取り上げられる要素をいくつかご紹介します。

IoT

IoTとは、「Internet of Things」の略称で、近年急速に実用化が進んでいる「モノのインターネット」のことです。わかりやすくいうと、スマートスピーカや自動運転車」など身の回りのいろいろなものがインターネットでつながることを指します。医療や物流、製造業にも活用事例があります。新規ビジネスモデル創出のためのデータ集計の観点からもDX推進において大きな貢献を果たすのではと期待されています。2020年、日本で5Gが導入され実用化されると、さらにIoTの普及が加速すると言われています。

AI

AI(人工知能)は、人間のような知能を持ったコンピューターと呼ばれています。大きな特徴は“自ら学習する”ことで、すでにスマートフォンやPCにも取り入れられています。その他、ゲームや医療などあらゆる分野において役立っています。AIが活用されている領域は現在でコンピュータービジョン(画像分類や生成)、音声認識・合成、自然言語処理(言語モデリング・質問への回答・機械翻訳)など、多岐にわたって活用されています。デジタルテクノロジーがさらに進化することに伴い、AIはより一層DXの推進に貢献していくでしょう。

5G(第5世代移動通信システム)

5Gは次世代の通信インフラとして2020年3月から都市部を中心とした一部のエリアでサービスが開始されました。5Gの特徴は「高速大容量・多数同時接続・高信頼・低遅延通信」などで建築現場・災害復旧現場での機器操縦を遠隔で行うことにより、従事者の安全を守ることができます。5G発展のためには、関連する技術やサービスが重要です。よく取り上げられるVRコンテンツ配信・スポーツ中継、遠隔操作に加えて、スマートシティの進化に貢献すると言われています。実際に色々な分野でサービス実用化への取り組みが行われており、5Gの特長を最大限に生かしたサービスやコンテンツが増えることは確実と言えるでしょう。
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5Gはどんな通信システム?メリットデメリットをわかりやすく紹介

アジャイル開発について

DX推進に最適なアジャイル開発についてもご紹介します。これは短い期間で実装とテストを繰り返す開発方式のことです。開発期間中にクライアント(発注者)からの要求や仕様変更が発生した場合も柔軟に対応することが可能で、素早いリリースも可能なため多くの企業で取り入れられている方法です。機能が動作する最小範囲でシステムやソフトウェアのテストを行い、クライアントと開発者が確認し意見をかわしながら仕様追加や修正箇所などを決めます。そして再度その工程でテストを行います。これを短いスパンで何度も何度も回していくことで、完成度の高いシステムやソフトウェアを開発することができるのです。

開発手法① スクラム

スクラム開発はアジャイル開発手法の1つで、フレームワークを行いながらチームで効率的に開発を進める方法です。ラグビーで試合に勝つためにはチームが一丸となってスクラムを組むことが必要です。ソフトウェアやシステム開発においても、共通のゴールに向かって開発者が一丸となって進めていくことが重要です。メンバーが計画を立案、設計、実行し、イテレーション(短期間で繰り返す開発プロジェクト)ごとに開発の進捗状況や制作物の動作を検査するので、チーム内のコミュニケーションがとても重要です。

開発手法② エクストリーム・プログラミング(XP)

技術面を重要視したプログラマー中心の開発方法です。事前の計画よりも要件や仕様の途中変更がしやすく、①コミュニケーション(利害関係者の間のコミュニケーションを円滑にする)、②シンプル(必要最低限の設計にとどめる)、③フィードバック(フォードバックを重要視し、定期的にテストを行う)、④勇気(設計や仕様変更に立ち向かう勇気を持つ)の「4つの価値」をチーム内で共有することが特徴です。また、ペアプログラミング(2人1組でのプログラミング)や、テストファースト(機能を実装する前にテストを作成する)などを行うため、プログラミングを効率的に行えるようになりリスク回避にもつながります。

開発方法③ ユーザー機能駆動開発(FDD)

こちらは顧客にとっての機能価値を重要視した開発方法です。利用者のビジネスをしっかりと理解することで、本当に必要な機能を洗い出し、ソフトウエアの開発を適切な間隔で繰り返していきます。ここまでアジャイル開発の手法を説明してきましたが、いかがだったでしょうか。アジャイル開発のメリットは開発スピードが早く、臨機応変な対応が可能なことで、デメリットとしては要件、仕様ごとにスケジュールを設定して開発をしていくため、全体でのスケジュールをコントロールすることがが難しい傾向にあります。企業のDX推進の目的とからめながら、適切な手法を探してみてください。

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