FlyZooHotel体験記 〜テクノロジー企業を標榜するアリババの挑戦〜
2019/12/12
アリババグループが運営する、最新テクノロジーを駆使したホテル「Fly Zoo Hotel」。膨大なデータを保持するアリババは、それを活用するため様々な領域で独自のテクノロジー開発を進めている。2018年末にオープンして以来、何かと話題のこのホテル。どんなテクノロジーと出会うことができるのか。実際に宿泊して感じたことをレポートする。
顔認証で手続きを簡略化
ホテルの入り口に、通常のホテルのようなフロントはない。あるのは整然と並んだ自動チェックイン機だ。アリペイアプリを使ってチェックインできる仕組みになっていて、スクリーンを覗き込んで顔認証も済ませる。
さて、ホテル内はどうなっているのか。ひとまず自分の部屋に向かうためエレベーターに乗り込むと、カメラとスクリーンがあることに気がつく。ここで先ほどの顔認証が役に立つのだ。エレベーターはただ乗っただけではどの階にも行けないようになっている。スクリーンで顔を認証してもらうことで、ようやく自分の宿泊階のボタンを押せるようになるのだ。私の顔と、何階のどの部屋に宿泊予定かという情報は常に紐づけられ、ホテル内の様々な箇所で活用されることになる。
部屋の前にたどり着くと、ふと手元に重要なものがないことに気がつく。そう、ルームキーをもらっていない。どうしよう?そう思ったとき、部屋のドアにもカメラがあることに気づいた。カメラの前に立つと、カメラの周囲が光って反応、鍵が空いた音がした。ここも顔認証で、ルームキーは必要ないのだ。これなら、ホテルでありがちなルームキーを室内に忘れて部屋から締め出される…といった事象も起こらないし、複数人で宿泊した際、誰がルームキーを持つかで揉めることもない。ホテル内のどこへ行くにも、自分の身一つあれば認証してもらえるのはかなり楽だと感じた。
室内を掌握するアリババの「魔人」
ロボットの活躍
また、インパクトが大きかったのが、ホテル内のバー。このバーの名物が「ロボットバーテンダー」である。夜に見学に行ってみると、思いの外ロボット感が強かった。
テクノロジーはあくまで顧客体験向上の手段
自動チェックインや顔認証システムによって待ち時間が少なくなったり、ルームキーなど持ち運ばなければならないものが減ったりすることで、身一つでスマートにサービスを受けられた。加えて、様々な場面で登場するロボットは、業務を効率化し機能的であるとともにエンターテイメント性が高く、宿泊体験を楽しいものにしてくれる。
このホテルは、テクノロジーを使用することが目的なのではなく、あくまで「顧客体験を向上させるためにテクノロジーを使っているだけ」なのだと気がついた。どんな最新のテクノロジーも、それ自体がすごい訳ではない。課題を解決できるからこそ意味があるのだし、普及していくのだろう。データと同じように、テクノロジーに対する姿勢にも「あらゆるビジネスを広げる力になる」というアリババの思想が反映されていると感じた。
流行の先端だから、競合他社が使っているからという理由だけで、テクノロジーありきで物事を考えてもうまくはいかない。全ては、現状をより良いものにするために。テクノロジーの活用でも、見習うべきところが多いと感じた宿泊体験だった。
***
次回以降は、アリババを離れ、中国の新興企業の今をレポートする。