【徹底解説】「X to Earn」とは何か。誰もがゲームや遊びで稼げる時代は来る!? DEA創業者に聞く<前編>

YouTubeに代表される動画投稿サイトなど、個人が発信することのできるツールの出現により、好きなことをして稼ぐための選択肢は増えています。そして現在、ゲームや徒歩、勉強さらには睡眠をするだけで稼ぐことのできる「X to Earn」というムーブメントが生まれつつあります。「ゲームで遊んで稼ぐ」なんてことが本当に可能なのか? 多くの人が抱える疑問について今回お答えいただくのは、Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.(以下、DEA)のFounder & Co-CEOの山田 耕三氏。インタビュー前編では「X to Earn」の仕組みと種類、今後の可能性など、未だ発展途上の新しい経済圏について根ほり葉ほりお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- 「X to Earn」の一つである「Move to Earn」とは歩いて稼ぐこと。「徒歩で移動する人が増加しCO2の排出を削減→カーボン・オフセットのための予算が流入→その予算を原資としてプレイヤーの収益に当てる」というストーリーが実現すれば、安定した「Move to Earn」が可能になる。

- 勉強して稼ぐ「Learn to Earn」では、世界的なブロックチェーンエンジニア不足への対応が期待される。優秀なエンジニアを求めるIT企業がそこに予算をつぎ込むことで、ユーザーはゲーミフィケーションを取り入れた勉強を楽しみながら収入を得て、さらにスキルを身につけられる。

- 「Sleep to Earn」では人々の睡眠時間を調整して、電気使用量のピークをずらすことも可能になると考えられる。「X to Earn」は単に好きなことで儲けるだけでなく、楽しみながら社会貢献に寄与できる側面もある。

- DEAの共同創業者である山田氏は元テレビディレクター。2011年よりテレビとインターネットの同時配信を手がけ、2018年にDEAを設立して「X to Earn」の普及に取り組んでいる。

いかにして外部経済圏の資金を流入させるか。それが「X to Earn」の肝

――ゲームで遊びながらお金を稼ぐ「Play to Earn」、歩いてお金を稼ぐ「Move to Earn」などに代表される「X to Earn」とはどのような仕組みで成り立っているのでしょうか?

例えば面白い話をしたり、美味しい料理をつくったり、子どもが楽しそうにおもちゃを開封したり、10年前はこういったことでお金を稼ぐことはできませんでした。しかし現在はYouTubeにそれらの動画をアップすることで、誰もが自分の好きなことをして稼げる時代になりました。YouTubeには商品を売りたい広告主が広告費を投入しており、それを見た視聴者の何人かが購入する。動画投稿者には再生回数に応じた収入が発生するわけです。

――子どもがおもちゃを開封して喜ぶ姿というのは、いつの時代も多くの家庭で普通に見られてきた光景ですが、それを動画にして人々と共有することで価値のあるコンテンツになるということですね。

基本は「Play to Earn」も同じ仕組みです。トークン価値の向上に加え、広告主からの出稿、ユーザーに提供する体験価値への対価といった外部経済圏からのお金の流入が発生しています。さらに最近は「Play to Earn」による社会課題の解決を見越した動きも出てきています。「Move to Earn」の代表的なゲームである『STEPN(※1)』は歩いて稼ぐことができます。なぜ歩くだけで稼げるのか? それはSTEPNを通して人々が歩けば歩くほど、CO2の排出量が減るからです。STEPNによりCO2が実際に減ればカーボン・オフセット(※2)のための予算が流入して、安定的に「Move to Earn」が成立するでしょう。

※1 STEPN:NFTのスニーカーを購入して、現実世界で移動することで仮想通貨を得られるゲーム。

※2 カーボン・オフセット:自らの活動により排出される温室効果ガスを主体的に減らす努力をした上で、削減が困難な排出量については、他の場所での排出削減・吸収活動により埋め合わせるという考え方。

「お金を払って学ぶ」のではなく、「学んでお金を得られる」時代に

――ほかには、どのような例がありますか?

現在、世界的にブロックチェーンエンジニアが不足しており、企業間で有能なエンジニアの争奪戦が発生しています。一人前のブロックチェーンエンジニアを育てるには最低でも1年~2年が必要といわれていますが、ゲーミフィケーションでエンジニアを育成する方法があれば、多くのIT企業がリクルーティング予算をここに注いでくるでしょう。ユーザーはゲーム感覚でブロックチェーンエンジニアの基礎を学ぶことができ、かつ稼ぐこともできる。予算を投入したIT企業はそこから育った人材を採用することができます。これが「Learn to Earn」と呼ばれる仕組みです。このように外部経済圏から資金を引っ張ってくる方法について、多くの「X to Earn」が試行錯誤しています。

――これまでのビジネスはお金を払う消費者と、商品を提供するメーカーという固定化された図式でしたが、「X to Earn」についてはその限りではないということですね。

YouTubeが存在しない時代、遊びながら好きなことだけで稼ぐことは不可能と思われていました。「X to Earn」が不可能だと思われているのは、外部経済圏からどのように資金が流入するのか想像できないからです。我々は世界でも先駆けて「X to Earn」を実現するためのチャレンジに取り組んでいるところです。いずれは「ゲームで稼げないなんておかしい」という時代がやってくるかもしれません。時代によって常識は変化するものですから。

いかに遠くの資金を持ってくることができるか。これが「X to Earn」の本質

――「X to Earn」の一つに睡眠をして稼ぐ「Sleep to Earn」がありますが、これはどのようなモデルなのでしょうか? 考えられるのは睡眠時のデータを提供して対価を得る、といった仕組みですが。

それもあり得るでしょうね。「Sleep to Earn」とは人々の睡眠を促進することが目的であり、睡眠は健康な生活に欠かせません。「Sleep to Earn」で規則的な睡眠を取ることで人々が健康になり、結果として医療費削減につながることが分かれば、多くの外部資金が流入してくるでしょう。「X to Earn」のモデルを考えるときに必要なのは「風が吹けば桶屋が儲かる」的な思考です。

もう一つ可能性として挙げられるのは、「Sleep to Earn」が電力を使用する時間帯のピークをずらすという考えです。電力需給がひっ迫する時間帯に人々が睡眠を取れば、それだけ経済全体から浮いたお金が生まれます。それを元手にして「Sleep to Earn」を普及させられれば、電力の使用を大幅に減らすことも可能になるでしょう。

――ピークをずらすというのは、例えば電気使用量の多い真夏の日中に睡眠を取ったユーザーには大きなリターンが得られるという仕組みですよね。

そういうことです。これは原資が明確に存在するので、イメージしやすいかと思います。アナログ時代は不可能でしたが、DXとブロックチェーン技術のおかげで、とある行動がその先の先の先の先で効果を生むことが明らかになれば、そこにいろいろな資金が入ってきます。一つの行動とは一つの意味だけでなく、捉える人の価値観によって色とりどりの意味を持ちます。ゲームの世界において稼げたのは、これまではごく一部のeスポーツプレイヤーだけでしたが、「Play to Earn」により誰もが稼げる時代が来るでしょう。

これからの時代は、一つの事柄に対して柔軟に想像をふくらませることが重要になると思います。この事象が起こることで、これがこうなってあそこが救われるといった具合に。いかにして遠くにある資金を引っ張ってこられるか。これが「Play to Earn」をはじめとする「X to Earn」の本質です。「遊んだらお金が稼げるなんて、あるわけがない」と決めつけるのは悲しい話。どこまで頭を柔らかくして遠くの価値と結びつけるかが勝負です。

ITとテレビの融合で視聴者の体験価値を変える

――山田さんが以前所属されていたテレビ業界とWeb3的な文化はまだまだ距離があるように見えます。テレビ東京時代のエピソードも含めて、独立に至った経緯を教えてください。

もともとテレビ東京ではディレクターとしてバラエティや音楽番組を手がけていました。凝り性なのでメジャーデビューしている若手ミュージシャンの流行曲はすべて聴いて、そのなかからヒットを見つけることが醍醐味だと思い情熱を持って取り組んでいました。あるとき、カラオケのWebサイトを運営する人たちと情報交換をする機会があって、そこでまったく聞いたことのないボーカロイド音楽の存在を知ってショックを受けたんです。もうプライドがへし折られた気分だったので、そこからボーカロイド音楽を勉強し、ニコニコ動画に触れたときはものすごくショックを受けましたね。当時はUGC(User Generated Contents)と呼ばれていたもので、ニコニコ動画のユーザーみんなが二次創作をすることでコンテンツが豊かになっていく姿を見て、こんな手法があるのかと。僕も長くテレビの世界でものづくりに携わってきましたが、そんな方法は見たことがなかった。そこから音楽のことを忘れて、インターネットの魅力に取りつかれましたね。それが2011年の話です。当時手がけていた『ドリームクリエイター』という番組は先にニコニコ動画で収録の様子を配信して、翌日にテレビ放送するスタイルでした。テレビ局のなかで最も早くインターネット連動を実現した番組です。

そこからさらに深くITとエンタメの融合にのめり込むようになりました。テレビディレクターとしては主に演歌と歌謡曲の番組の総合演出などを手がけ、視聴率はそこそこ取れていました。テレビはターゲティングが明確なので、演歌を聴く70代~80代向けの番組をつくればしっかりと数字に反映されるんです。でもやはり、ITのほうがエンタメの次元を変えるといいますか、ニコニコ動画で収録の様子を先行配信するほうが、従来のテレビ番組を放送して反響を待つよりもエキサイティングな体験でした。収録の様子も公開することで視聴者といっしょに番組制作の経緯を楽しむ。そのプロセスエコノミーが視聴者の体験価値を大きく変えることに気づきました。

――2011年当時と現在を比べて、どのような変化を感じますか?

ようやく時代が追いついてきて、今やITとテレビの融合が当たり前です。2011年当時はインターネット連動をやっていたのが僕だけだったので、断トツのノウハウを持っていました。AbemaTVやLINE LIVEをはじめ、IT企業が映像系のコンテンツをつくるときにはよくお声がけいただきましたね。

2017年になるとNFTの技術が誕生して、『CryptoKitties(※3)』というゲームがリリースされます。当時、猫のNFTアート1枚に1,800万円ほどの値段がついたというニュースを見てNFTやブロックチェーンについて調べ、それらが根本的に人々の体験価値を変える可能性があると考えました。そこから2018年の夏にシンガポールでDEAを起ち上げてコツコツやってきたところ、2021年がNFT元年といわれるようになり世界が追いついてきたなという感覚です。

※3 CryptoKitties:子猫の売買や交配を行い、自分だけの猫をコレクションできるNFTゲーム。

――当時の山田さんはテレビ業界でも異端的な立場だったのでしょうか?

そうですね、異端でした。「あいつはなにをやっているか分からない」と言われてましたね(笑)。それでも番組では視聴率を取っていたし、IT企業からのスポンサードで売上もあげていました。ヒットコンテンツで名前を売るのではなく、視聴率とお金をあげて独自の安定したポジションを築いていましたね。安定はしていてもシニア層がメインターゲットになりつつあるテレビで若者向けのコンテンツをつくり続けるのは難しいと考え、思い切って独立に至ったわけです。
山田 耕三
Digital Entertainment Asset Pte.Ltd. Founder&Co-CEO

戦略構築とコンテンツ事業、メディア事業統括を担当。プラットフォーム事業「PlayMining」でのコンテンツ開発とNFT企画を手掛ける。NFTの可能性と有用性を啓蒙するYouTubeチャンネル「NFTv」Webメディア「NFTnavi」を運用。新しいNFTランナップ「DEPARTURE」を通じて、アーティストを始め多くのクリエイターがNFTの世界に飛び込むことを応援するのが目下の目標。NFT Awards 発案者。
テレビ東京で15年間 音楽・バラエティ番組のプロデューサーを務めた経歴を持つ。
東京大学 法学部出身。

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