中国を代表するAI企業・百度(Baidu)、業界を牽引する自動運転技術は、どこまで進化しているのか。バイドゥ株式会社 張 成煥社長に、立教大学ビジネススクール田中道昭教授が迫る

中国で検索エンジン市場最大手を誇り、グローバルでもGoogleについで二番手につける百度(以下、Baidu)。現在は、AIカンパニーとして、自動運転プラットフォーム、音声認識AIシステムの二つを今後の注力領域としています。今回は、Baidu本社の海外部門の総括、総責任者を務めると同時に日本法人であるバイドゥ株式会社(以下、Baidu Japan)の代表も務める張社長にご出演いただき、グローバルを席巻するメガテック企業の一角を占めるBaiduの描く未来や戦略について、立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

前編は、国際情勢が変化する中、今回の対談に至った想いから始まり、Baiduの注力領域である自動運転プラットフォームの現状と展望についてお話を伺います。

*本稿は対談の要旨であり、実際の対談内容は動画をご覧ください。

「困難な環境だからこそ、海外のDXの最新動向を伝えたい」:対談実現への想い

田中:デジタルシフトタイムズ、田中道昭です。本日は、Baidu Japanにお伺いしております。こちらにいらっしゃるのはBaidu本社の海外部門の総括、総責任者であり、同時に日本法人であるBaidu Japanの代表を務めていらっしゃいます張社長です。

張:よろしくお願いします。

田中:お忙しい中ありがとうございます。最初に今日の対談にあたっての私どもの使命感やスタンスをお伝えしたいと思います。

ご存知の通り、アメリカのトランプ政権の4年間で世界情勢が一気に変化し、一言で言うと、米中新冷戦が一気に進んだ4年間でした。今年の1月20日に、アメリカでバイデン政権が誕生しましたが、新政権は中核施策として人権や安全保障問題を掲げており、今、さらに米中新冷戦、日本をめぐる情勢は非常に難しくなっていると思います。

私自身もこのような仕事をさせていただく中で、当然ビジネスと国際政治や安全保障の問題は表裏一体だと思っており、別物だとはまったく思っておりません。その一方で、今年の年始に初めてオンラインで開催されたCES2021は、Baiduを始めとした中国の大手IT企業が全く参加していない状況でした。この一年間、日本からではありますが、様々な企業の動きをベンチマーク、取材していく中で痛感しているのは、この1年の間にも米中それぞれにおいてテクノロジーが進化しているということです。

その一方でCESに軒並み中国の大手IT企業が参加していない状況からすると、正直、世界一のテクノロジーショーと言われてきたCESも、片落ちの状況になっていると感じております。そのような状況下において、日本では海外のテクノロジーの進化がなかなか伝わっていません。困難な環境下だからこそ、それをなんとか皆さんにお伝えしたいという使命感を持って、様々な活動をしています。

そのような想いのもと、今回はBaidu Japanの代表であり、Baiduの海外部門の総責任者である張社長に取材の申し入れをさせていただきました。張社長とこれから1時間強、対談を致しますが、日本語も本当に堪能でいらっしゃいます。中国人であり、アメリカでも教育を受けられ仕事をされていましたので、アメリカ人のお気持ちもわかる方です。今は日本に駐在され、奥さまもずっと日本語を学ばれてきたということで、日本人の気持ちもご理解されています。このような環境下、Baiduではローキーで慎重な広報戦略を行っており、テクノロジーの進化を誇示するようなことはしたくない状況ではないかと思います。今の環境的に本来、対談には相当高い制約がありますが、私達の使命感にご共感いただき、本社の許諾のもとご登場いただきました。本日はお時間をいただきありがとうございます。

張:田中先生、対談の機会をいただき、本当に光栄です。今日もよろしくお願い致します。

田中:前置きが長くなりましたが、このようなスタンスのもと、ここからは通常通り対談を進めてまいります。

早速ですが、Baiduという会社は、日本でやはりBAT(Baidu、アリババ、テンセント)という三社の一角ということで有名ですし、一番わかりやすい表現は「中国のGoogleである」というものです。

張:そうですね。皆さんそのようにおっしゃいますね。

田中:中国のGoogleと申し上げているのは、やはり中国では検索分野でずっとナンバーワンですし、Googleと同じようにAIにおいても中国でトップ企業であります。それを生かして今Apollo計画に代表されるような自動運転プラットフォームに力を入れていらっしゃいます。前置きが長くなって恐縮ですが、まずは張社長の方から、簡単に自己紹介をお願い致しします。

張:そうですね。自己紹介をする前に、冒頭にお話させていただきたいのですが、柔道の古賀稔彦さんが昨日死去されましたよね。

田中:本当にショッキングなニュースでしたね。

張:本当にショッキングでした。古賀さんは本当に、日本だけでなく中国人にものすごい影響力のある方でした。

田中:そのようですね。

張:彼が柔道で金メダルをとったのが1992年、バルセロナオリンピックの時です。ちょうど私は中国の天津南海大学の学生でした。その当時、中国はちょうど「改革開放」政策の中間期でした。バルセロナ五輪を見ながら、中国国民は、先進国や欧米に対する憧れを感じていましたし、また古賀さんがアジア系として金メダルを取ったことが、中国の若者たちに、非常に勇気を与えました。この出来事を思い出し、改めて感謝をしながら今日、対談をさせていただきたいと思っています。

話をBaiduに戻しますと、Baiduは先ほど田中先生にご説明いただいた通り、検索など様々な分野で中国ナンバーワンですし、皆さんから中国のGoogleとご評価いただいています。最近では、弊社は自らをAIカンパニーと位置付けています。実は、世の中の著名IT企業の名前の中で、AIという文字が入っている会社は弊社しかないんですよ。

田中:なるほど、Baiduの中に、AIが入っているわけですね。

張:ある意味運よく、DNAの中にAIを持っている会社なのかもしれません。

田中:李会長がBaiduと名付けたときに意図してAIの文字を埋め込んだというわけではなく、シンクロニシティだったのですね。

張:そうですね。AIカンパニーとして、今ものすごくAIに力を入れていますし、そのような運命があるのだと思います。そのAIの中で、今力を入れているものは2つあり、ひとつは自動運転のオープンプラットフォームである「Apollo(アポロ)」。もうひとつは対話式AIの「DuerOS(デュアオーエス)」です。

田中:「DuerOS」は、Amazonアレクサ、Googleアシスタント、アリOSに相当する、音声認識AIシステムですね。

張:はい。メインの柱はこの二つですが、実はAIはAI事業だけのために利用しているのではなく、実は全ての事業の隅々にまでAIが入っています。たとえば検索ビジネス、これを今、弊社ではモバイルエコシステムビジネスと言っていますが、その中にも全てAI技術が入っています。

田中:なるほど、ありがとうございます。まず、自己紹介の中で古賀さんの追悼の意を表していただきました。それだけ中国人の方に大きな影響を与えているということは、我々日本人にとっては非常に嬉しいことです。むしろ92年くらいの時代だったからこそ、ある意味手放しでそう思っていただけたのかもしれませんね。

張:そうですね。

田中:冒頭お話させていただいたように、政治、経済、社会、テクノロジーなど、すべては表裏一体であり、切り離すことは難しいですが、我々は民間でビジネスをしていますし、どんなに国際政治で分断されたとしても、人と人の繋がりは分断しきれないと思います。そんな中、古賀さんの話から始めてくだったことを非常に嬉しく思います。

張:ビジネス業界は今、本当にグローバルな時代です。私は個人的に政治にあまり興味がないですが、アメリカ、日本、中国、EUも含めて、世界のビジネスパーソンが一緒に頑張りながら、この世界をもっと豊かにする、これが我々の目標です。いちばん簡単なこととして、株主の利益を最大限にすることが、我々の当たり前の仕事ですので、そのために精一杯頑張っています。

田中:そうですね。そういう意味では我々民間の人間も含めて、米中や日中、日米にしても、やはりお互いが言うべきこと、言わなければいけないことを言い、その中でより建設的な関係を作ることができればと思っています。今日はその一つになるよう、よろしくお願いします。

張:はい、よろしくお願いします。

オープンプラットフォームとして他企業との共創で進める「Apollo計画」

田中:張社長もご存知の通り、私が執筆した様々なビジネス書の中で、Baidu社を、かなり徹底的に特集したのが『2022年次世代自動車産業』という著書、それからタイトルの中にも入っていますが『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』です。特に、2018年6月に出版した『2022年の次世代自動車産業』という本の厚さをご覧いただきたいのですが、477ページあります。

張:すごいですね。

田中:ビジネスの新書としては異例の厚さで、私も相当こだわってリサーチをし、執筆をしました。477ページ、全体は11章で構成されていますが、6章はまるまる中国章です。6章だけで実は73ページあるのですが、そのほとんどをBaiduのApollo計画について書かせていただきました。

張:本当に光栄です。

田中:当時、実はBaiduの方から「田中先生、コーポレートサイトにはここまで出ていないのですが、どうやってリサーチしたのですか?」と聞かれました。たしか張社長にも聞かれたと思うのですが、タネを明かすと実はCES2018に行った時、ものすごく大々的にApollo計画についてのブース展示をされていました。

張:そうですね。私もその時、ラスベガスのCESの会場にいました。

田中:ではよくご存知ですよね。かなり大きなブースで、5箇所ほどで動画が流されており、その中で様々な発表がされていました。それで、私は一週間の内の半日ほどBaiduのブースに張り付き、その動画を全部録画して研究したのです。

張:すごいですね。かっこいい。日本人の細かさが見えますね。

田中:ありがとうございます。その中で、私自身驚いたのはCES2018でBaiduのApollo計画が発表されたことです。 さらに驚いたのは翌年のCES2019に行った時に、この本にも記載しましたが、2018年から21箇所で自動運転ミニバスを運行しているとの発表がありました。

張:ああ、なるほど。そうですね。

田中:さらに驚いたのが、2018年7月からレベル4の自動運転ミニバスをすでに量産し始めている、と。実際の運行映像が流れていて、それに衝撃を覚えました。実は2019年3月に北京にお伺いし、実際にBaiduの自動運転ミニバスにも乗っています。本当に長年ベンチマーク、分析させていただいている会社がBaiduなのです。

まずは日本の代表である張社長の方からApollo計画はどんな計画であり、どんな思いで進められているのかをお聞かせいただけますか?

張:そうですね。弊社は2014年・15年頃からApollo計画を開始しています。これはWaymo*などのアメリカ式と違い、Baiduはオープンプラットフォームとして進めています。つまりIT企業、テクノロジー企業一社だけではなく、世の中の車メーカーと一緒に組んで、自動運転に取り組んでいこうと、オープンプラットフォームを採用しています。そういう意味では、車の為にAndroidシステムを提供するのと同じですね。このオープンプラットフォームを提供することにより、他の企業と共に、自動運転分野での成長を加速させています。先ほど田中先生がおっしゃっていた、『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』の書籍は、実は弊社の本棚にも置いてあります。

*Waymo:グーグル(Google)の自動運転車両プロジェクトとして始まり、現在はアルファベット(Alphabet)の子会社

田中:厳しい話もさせていただいておりまして、すみません。

張:本当に勉強になりました。2018年には、自動運転のミニバスもありましたし、当時は日本企業とも一緒に協力をしていました。例えばパナソニック社と一緒に組んで、未来のキャビネットの形で、人間を車から解放しましょう、車の空間で本を読んだりビデオを見たりする、という取り組みを行いました。弊社もApollo計画の一貫として様々な協力をしたことがあります。そして、最新の進歩状況を皆さんにお伝えしますと、去年発表したのがApollo GOです。Apollo GOはロボットタクシーとロボットバスですね。

田中:乗用車型ですね。

張:はい。また、去年12月には中国の広州でApolloエコシステムカンファレンスを開催し、そちらではインテリジェントビークル、つまりスマートな車の意味ですね。そのトータルソリューションを発表しました。

田中:MaaS、モビリティ・アズ・ア・サービスのプロジェクトという感じでしたね。

張:そうですね。インテグレーションスタイルです。それが4つあります。つまりインテリジェントコックピット、 インテリジェントクラウド、 インテリジェントドライビング、そしてインテリジェントマップ。弊社はこの中で、車だけはありませんが、その他3つを全て持っています。マップは百度地図(以下、Baidu Map)がありますし、クラウドは百度雲(以下、Baidu AI Cloud)があり、ドライビングはApolloシステムがあります。それらで自動運転をさらに進めています。

田中:そうですね。私が過去に刊行させていただいた本の中の図表を元にお話させていただきたいと思いますが、BaiduのAI事業の体系の中にクラウドやAIは位置付けられてます。
それから自動運転のプラットフォームでいうと、 この本の中の図表24に提示させていただきました。

テスラも採用。中華圏の覇権を握る、自動運転の中核・三次元マッピング「百度地図(Baidu Map)」

田中:次に、この一年間の動きに移らせていただきます。Baidu Mapのお話がありましたが、やはり昨年一年間で私が一番注目したニュースは、1月にテスラがBaidu Mapを採用するという発表をしたことです。

張:はい。そうですね。

田中:ご存知の方も多いかもしれないですが、元々テスラはテンセントが出資をして、テンセントの自動運転用のマップを採用してきました。おそらく実際にテスラも中国で事業展開をする中で、自動運転実現が視野に入ってきたことで、Baidu Mapに切り替えたのだと思います。

ご存知ない方も多いと思うのでお話しさせていただくと、3次元マップというのは、自動運転の世界の中ではデジタルインフラと言われています。今我々が普通の車に乗っている時に表示される地図は運転者のための地図表示ですが、自動運転の世界の3次元マップというのは、むしろ交通を制御する、マネジメントコントロールをするものです。仮に白線が消えている、信号がないところでも、全部デジタルの世界でそれが再現されていて、そこにどんなものがあるのかを忠実に再現しているのが3次元マップです。だからこそデジタルインフラと言われています。

そのデジタルインフラと言われている3Dマッピングを、テスラが乗り換えたというのは、ほぼこのタイミングで、中国だけではなく中華圏の世界の自動運転のマップの覇権をほぼBaiduが手にしたとも言えるのではないかと分析していますが、いかがでしょうか。

張:そうですね。Baidu Mapは、実は中国でほぼナンバーワンのシェアを持っています。確かに先生のおっしゃった通り、これは単純なマップではなくプラットフォームになっています。

田中:今のナビとは決定的に違いますよね。

張:はい。決定的に違います。もし皆さんが北京や上海に、出張や観光で行くチャンスがあれば、Baidu Mapですべて解決できます。ホテルもBaidu Mapで近くのホテルを予約できますし、グルメな方は美味しいお店も探すことができます。想像以上のプラットフォームになっていると思います。

先ほど私が申し上げたDuerOSのシステム、つまり音声認識もBaidu Mapにデフォルトで設置されています。ですからテスラも含め、多くの有名メーカーがBaidu Mapを搭載したのだと思います。

田中:そうですね。先ほども話に出ましたが、DuerOSというのは音声認識AIアシスタントで、他社でいくと、GoogleアシスタントやAmazonアレクサに相当するものです。それが自動運転用には、DuerOS for Apolloということで展開されているということですね。

張:おっしゃる通りです。

田中:おそらく自動運転の世界のプラットフォームというのは、相当多重にわたるレイヤー構造があり、各レイヤーの中でプラットフォームができていて、その中核の一つがやはり三次元のダイナミックマッピングの世界だと思います。その分野の、中国だけではなく中華圏での覇権争いで、おそらくこのタイミングですでに覇権を握ったのがBaiduであるということですね。

張:まぁ、そうですね。ちなみに、中国だけではなく、実はインバウンドとして日本の企業も、ものすごく盛んに利用しています。

田中:すでに利用されているのですか。

張:はい。中国人も含め、さきほど申し上げた中華圏の中でも数が多い、台湾・香港の方も、日本に来たら日本のレストランを探したり、駅を探したりする際にBaidu Mapを使っています。2019年、日本政府とも協力し、万が一大地震や津波が起きた時には、避難所の案内などをBaidu Mapから提供できるようにしました。社会的な意味でも、本当に重要なプラットフォームになっています。
これは日本人向けではなく、あくまでもインバウンドですので、中華圏のユーザー向けですね。

田中:そういう意味では中華圏の中ではかなり使われているということなんでしょうね。ありがとうございます。

5G×自動運転。過酷な交通環境での実証実験を乗り越えて得た勝算

田中:先ほどもお伝えしましたが、昨年1月に聞いてとても驚いたニュースが、テスラがBaidu Mapに切り替えたというものでした。それから、先ほどお話があった9月の「Baidu World*」です。今までは直接行かなければ参加できませんでしたが、去年はコロナ禍のため、オンライン配信を拝見させていただきました。この中で、先ほどお話いただいた自動運転タクシーや自動運転バスが重慶等の都市ですでにスタートしていると知り、非常に驚きました。

*Baidu World:Baiduが開催する技術革新カンファレンス
今回のBaidu World2020では、最初に李会長が登場され、自動運転タクシーがステージに登場しましたが、本物かと思ったらバーチャルリアリティの3Dということでした。本物さながらに回っていて、すごいテクノロジーだなと驚きました。

それから、日本の自動運転の文脈ではまだ現実に運用されているものとしては登場していませんが、李会長が常に強調されてたのは、やはり5G×自動運転です。2019年から、中国の北京で5G×自動運転が可能になったことで一気に進んだという発言をされていました。その中の一つとして、このタクシーが量産化に入っているという話でした。

実際にリアルなものを展示するのではなく、あえてバーチャルの3Dで示されていたということにも、非常にインパクトを受けました。VRARも相当進んでいらっしゃいますね。

張:VRとARは、自動運転だけではなく、弊社で幅広く研究・開発しながら活用しています。昔から弊社で注力してきたことが、コロナ禍でみなさんイベントを全てバーチャルで開催するようになり、より加速したということだと思います。

田中:そうですね。5Gで低遅延になってきたことで、見ていて一気にリアリティが高まったと思います。それから、昨年のBaidu Worldでは当然自動運転、ミニバスやApolloが強調されていましたが、非常に面白かったのは、2017年に李会長が北京で自動運転車に乗った際に、違反ではないかと報じられたニュースについて触れられていたことです。

張:はい、ありましたね。

田中:そのエピソードに触れながら「これから北京で、自動運転で走っている様子をお見せしますが、今はもう普通に許可を得て走っています」という説明があり、笑ってしまいました。非常にチャーミングな方ですね。

張:面白いですね。科学を追求する道には必ず色々な坂がありますし、面白いエピソードもあるはずです。

田中:そうですね。そういう意味では、2017年の時は若干強行突破であったかもしませんが、昨年9月のBaidu Worldにおいては、全てライセンスが下りた上で走っていますというご説明の上で、この動画が流されていました。

先ほどお話したように、私も2019年の3月に北京のApollo Parkで自動運転ミニバスに乗らせていただきましたが、その時もある程度のスピードが出ていました。それ以上に驚いたのは、公園の中の道でしたが、人が普通に歩いていて、車と50センチくらいの近さでした。
そういうところまで機械学習させないと、なかなか自動運転の安全性は担保できないのかなと思った記憶があります。
今回のBaidu Worldで出てきた映像では、普通に車が走っている、それから人も歩いて横断している。その中で普通の速度で車が動き、人が来ると止まるということで、普通の公道を自動運転車が走っていることに衝撃を覚えました。私がここまで話をしてきた流れの中で、今まさにどこまで進化しているのかを、皆さんにご説明いただければと思います。

張:そうですね。中国の交通状況は極めて複雑です。自転車で走る人、横断する人など、様々な要素があります。実は中国は自動運転に関して一番厳しい環境だと、弊社内部では冗談半分で言っています。
田中:そうですか?意外ですね。

張:はい。アメリカや日本はきちんと備わったインフラがあります。ただ、中国はインフラを備えていないにも関わらず、様々な研究開発を進めています。ここで生き残れば、どこに行っても大丈夫だという気持ちです。この動画を見ると、確かに自転車が逆から走ってくることや、マナー違反もあります。それにも関わらず車は様々な判断をしながら自動運転をしています。

田中:そうですね。本当に非常に驚きました。普通に公道を走り、車も人もいる中で、人が歩いて来たら止まっている。しかも表示はされていませんが、多分60キロ・70キロのスピードは出ていますよね。

張:普通にそれくらい出ていますね。

田中:それがまず非常に驚きました。後編では、Baiduの自動運転車のハードの展開、およびEV業界への参入についてもお伺いさせてください。

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