中国最前線

デジタル大国・中国を生み出した『3つの国家戦略』

医師国家試験に合格したAI搭載ロボット、大手ファストフード店から街中の小さな露店まで至るところで行われるQRコード決済によるキャッシュレス化。これは全て、今、中国で起きていることである。中国は今や「デジタル大国」となっており、実際に中国に行き、その先進性に驚く日本人は多い。
バイドゥが開発した自動運転バス「アポロン」

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出典元:アフロ
バイドゥの自動運転車プロジェクト「アポロ」で開発した車

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出典元:時事通信社
アイフライテックがCESで展示したAIアナウンサー

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出典元:Imaginechina/時事通信フォト
そんな「デジタル大国」の根幹を支えるのが、中国発の大手テクノロジー企業4社(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)だ。各社の頭文字を取り「BATH(バス)」と呼ばれる。

そもそもは、アメリカのIT企業、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを表す「GAFA(ガーファ)」を模倣するような存在だったはずだが、今やGAFAにとっても脅威となっている。

「BATH」を含め、中国の「デジタル化」が注目され始めたのは比較的新しいという。
なぜ、中国は急速に「デジタル大国」になったのか?
なぜ、「BATH」は急激に台頭したのか?

そこには、「中国全体としての国家戦略がある」と語るのは、株式会社オプトホールディンググループ執行役員・吉田康祐氏だ。中国への視察ツアーを実施し、自らも最前線で中国の動向を追い続けている吉田氏に、中国が最先端国家になった理由を伺った。
中国がGDP最強時代の到来を前にロールモデルを変える
大手コンサルティング会社PwCは、2030年のGDP上位3カ国が上から、中国、アメリカ、インドになると予測している。現在から10年後にかけて、中国にビジネスが集中すると考えられているのだ。

また、アジアのインターネット人口は、既に中国が3分の1以上を占めていることからも、特にデジタル領域で中国の存在感は増すと言えるだろう。
吉田氏は、「これまでのタイムマシン経営は、アメリカのシリコンバレーで誕生した、フェイスブックやツイッターを含むあらゆるサービスを日本で展開させていました。

皆、アメリカ、特にシリコンバレーを注目していたんです。でもこれからはそのロールモデルを中国に代えていかなければいけません」と語る。
市場成長を後押しした「3つの政策」
なぜ、ここまで中国のデジタル化は加速したのだろうか?

吉田氏は「中国が強いと言えるのは、国を挙げて産業とインターネットを結び付けようという方針を発表したためです」と、国としての政策を指摘する。

中国のデジタル化が加速したのは、習近平国家主席のもと李克強首相が2015年3月に言及し、7月に指導意見として発表した「インターネットプラス政策」がきっかけだ。

「インターネットプラス政策」は、同年5月に発表された「中国製造2025」、2017年に発表された「次世代AI発展計画」と合わせて、世界のトップを目指す中国の戦略の柱となっている。
それぞれの政策を簡単に見てみよう。

「中国製造2025」は、次世代モバイル通信システム‟5G“や新型エネルギー車などの10の重点分野と23品目を具体的に挙げてそれぞれに高い市場比率を目標値に掲げている。
「インターネットプラス政策」は、電子商取引、金融包括、人工知能など11の指定分野においてインターネットと既存産業の融合を目指したもの。
「次世代AI発展計画」では、AIがこれからの経済成長を担うとし、2030年までに中国のAI技術力を世界トップレベルにすると打ち出した。
吉田氏はこれらの政策に対して、「発展させるべき分野を明確に指定した国家戦略ですから、社会的変化が加速度的に進みやすい」という。

一方で、注力分野が明確なため、「変化を注視していれば、我々としてもどのタイミングでどの市場にどんなサービスで参入していけばいいか、判断しやすいのです」と語る。

ただし、これらの政策に代わる新しい政策が発表される可能性があることから、常に、中国の国としての考え方をウォッチし続ける必要がある。
究極のユーザーファースト。目的は人手の省略ではなく、国民の快適さ

中国事業を担当する吉田氏には、「中国のデジタル産業が発展するのは約14億人という人口によるものだろう、つまり人口が多いからでしょ?」という質問を多く受けるという。しかし、「それは誤解です」と断言する。

吉田氏は、「国が構築するエコシステムの上に、14億人もの経営資源が乗っていると視点を変えてみてください。すると、人口の多さを強みとしてうまく生かしているからこそ、目覚しい成長があるという見立てができるはずです」と語る。

「政府主導と聞くと半ば強制的なイメージがつきまといがちですが、あくまで政府は方針を決めるのみで、サービスを提供するのは民間企業です。民間企業がサービスを提供しやすいように政府がサポートしてあげているという構図のため、むしろユーザーファースト。非常に使いやすく便利なサービスがどんどんと増えている印象です」。

その結果、世界に先駆けて新しいサービスが誕生し、ベンチャー企業が生まれやすい土壌が育まれたのだという。

「そもそもまずやってみるというトライ&エラー精神が根付いた国民性なんですよね。そして市場規模も大きいため、大きく発想し、素早くPDCAを回すという考えが企業にも染み付いています。日本と比較すると10倍の速度で経済圏が拡大していっている感覚です」。
百聞は一見に如かず。まずは中国に出かけるべき
吉田氏は中国への視察ツアーを実施している。日本人には、中国の状況やデジタル化の速度がなかなか伝わらず、「中国」と聞いただけで足が遠のく人が少なくないという。

「上海なら約2時間半、北京なら約3時間半で到着できますから、大阪へ出張に出かける感覚で何はともあれ中国に出かけてみてください!と、企業トップの方々にはお伝えしたいですね。百聞は一見如かず、です」(吉田氏)。

実際に、心理的なハードルを乗り越えて中国へ視察に出かけた国内自動車メーカーの経営陣が、帰国後すぐに社員を中国へ送り込んだこともあったという。ガソリン車の生産をメインにしていたが、中国ではEV・自動運転・無人運転の話ばかりでガソリン車に言及する人は皆無だったため、危機感が募ったとのことだ。

吉田氏は「中国に追いつけないとしても、日本企業は今、中国モデルに倣わなければ生き残ることは困難だと言える時代です。中国で何か起きているのか?は常にキャッチアップしておかないといけないと強く感じています」と日本企業に警鐘を鳴らしている。

〈後編〉では「究極のユーザーファースト」を追及する最新の中国デジタル化事情について吉田氏に伺う。

【お話しいただいた方】
株式会社オプトホールディンググループ執行役員 吉田康祐氏

【プロフィール】
Kosuke Yoshida●株式会社オプトホールディンググループ執行役員、香港オプト、深圳オプト代表取締役社長。学生時代より中国に興味を持ち、中国語を学ぶ為に拓殖大学外国語学部中国語学科に入学。在学中の2000年に北京に交換留学生として留学を経験。2004年に株式会社オプト(現オプトホールディング)に入社、営業時代に社内MVP受賞、その後営業責任者、メディア責任者を務め、2010年より執行役員に就任、マーケティング事業を管掌。2015年4月に株式会社オプトホールディング上席執行役員に就任、中国事業を管掌。2019年4月よりグループ執行役員として、新規事業立ち上げをミッションとしたデジタルシフト創造領域を管掌。またデジタルハリウッド大学大学院で客員教授を務め、インターネットマーケティングの普及にも力を入れている。

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