【総括】注目5業界のリーダーが振り返る「2020年のDX」

新型コロナウイルスが猛威をふるった2020年。外出や人との接触を避けるため、急速にデジタル化が進んだ一年になりました。毎年、その年を象徴する言葉を選ぶ「2020ユーキャン新語・流行語大賞」では、「オンライン○○」がトップテン入り。オンライン飲み会やオンライン診療など、さまざまなオンライン化が進んだことが選考理由にあげられています。同時に、「デジタルシフト」や「DX」という言葉も一般的に使用されるようになりました。

Digital Shift Timesでは、社会全体がデジタル化に舵を切った2020年のDX事情を調査すべく、5つの業界のリーダーにアンケートを実施。各業界の一年間をDX観点から振り返っていただき、さらに、2021年以降の展望や注目のキーワードも伺いました。今回アンケートを実施したのは、「HR」「タクシー・ハイヤー」「小売」「教育」「エネルギー」の5業界。まだまだDXが加速しそうな来年以降を見据えるためにも、ぜひ参考にしてください。

【HR業界】

株式会社SmartHR 代表取締役 宮田 昇始氏

Q:いまご自身の業界のDX進行スピードは5点満点中何点でしょうか?

5点

Q:コロナ禍でDXが進んだ部分はあるでしょうか?

大企業を中心に、これまでは「いつか導入したい」と、SmartHRをはじめとしたクラウドサービスの導入を見送ってきた企業が、軒並み導入や再検討をはじめてくださいました。「いつか」が一気に来たという感覚です。
ECの分野で、直近10年間では+10%程度のEC化率だったものが、コロナ禍の3ヶ月で約17%から約34%と、2倍成長したというデータがありますが、同様の変化がここ1〜2年にDXの文脈でも起こると思います。


Q:DX観点で、ご自身の業界全体に期待することは何でしょうか?

クラウドサービスの導入が一気に進むことです。クラウドサービスを導入している企業と、導入していない企業では生産性に30%も差があるというデータがあります。しかし、日本は「クラウド後進国」とまで言われてしまっている状態です。まずは、クラウドサービスへのアレルギーを払拭していただき、生産性向上の第一歩を体感していただきたいです。

Q:DXが進むことにより、ご自身の業界ではどんな未来が考えられるでしょうか?

人事や労務という仕事、役割、適任者が変わっていく未来が考えられます。大量の紙、問い合わせをさばくための時間、頭の使い方から、データを活用しながら戦略的に労働生産性向上を考える仕事に変わっていく。今でいう経営企画のような人材が、モノやカネだけでなく、ヒトにより強くコミットしていくようになると思います。

Q:ご自身の業界に関連する、来年以降の注目の法改正等はありますか?

IT基本法
個人情報保護法

Q:個人的に注目している直近のキーワードはありますか?

Long Term Stock Exchange
e-KYC
WorkTech


Q:今年一番のおすすめ本をお教えください(※DX観点でなくても結構です)。

「ブリッツスケーリング」


宮田昇始氏のインタビュー記事はこちら

【ハイヤー・タクシー業界】

株式会社Mobility Technologies 代表取締役会長 川鍋 一朗氏

Q:いまご自身の業界のDX進行スピードは5点満点中何点でしょうか?

2点

Q:コロナ禍でDXが進んだ部分はあるでしょうか?

タクシー配車アプリの応答率が上がった(タクシー乗務員のDXが進んだ)。

Q:DX観点で、ご自身の業界全体に期待することは何でしょうか?

タクシーメーターをソフトウェア化してもっと運賃を柔軟にする。

Q:DXが進むことにより、ご自身の業界ではどんな未来が考えられるでしょうか?

DXでタクシーはゴールデンエイジを迎える。

Q:ご自身の業界に関連する、来年以降の注目の法改正等はありますか?

タクシー相乗りが合法化される。

Q:個人的に注目している直近のキーワードはありますか?

AIドライブレコーダー

Q:今年一番のおすすめ本をお教えください(※DX観点でなくても結構です)。

「鬼滅の刃 22巻」


川鍋一朗氏のインタビュー記事はこちら

【小売業界】

ナレッジ・マーチャントワークス株式会社 代表取締役 染谷 剛史氏

Q:いまご自身の業界のDX進行スピードは5点満点中何点でしょうか?

3点

Q:コロナ禍でDXが進んだ部分はあるでしょうか?

外食業では、店舗内での飲食が厳しくなり、冷凍食品のWEB販売や宅配専用のゴーストキッチンの事業に乗り出す企業が増加した。また非接触による決済のためテーブルにタブレットが設置されるなど、WEB販売、決済系は進んだという印象。小売業では、SV(スーパーバイザー)の臨店活動が感染対策と共に抑制されたのを受けて、SVがリモートで売り場改善を図るニーズが高まってきた。クラウドカメラを活用した臨店の効率化や店内従業員の実行力を高めるようなDXが今後、展開されると思う。小売業でも非接触対応のセルフレジ導入や、決済周りの無人化は来年さらに進んでいくと思われる。

Q:DX観点で、ご自身の業界全体に期待することは何でしょうか?

店舗運営がデジタル化できていないことで、店舗における業務の進度や完了が可視化されておらず、生産性の悪化を招いている。店舗内の可視化のため、従業員のBYOD活用についての理解が進むことを期待している。

Q:DXが進むことにより、ご自身の業界ではどんな未来が考えられるでしょうか?

店舗内での指示実行力をアップし、生産性を高め、非正規雇用の方々の仕事の体験価値を向上させる。

Q:ご自身の業界に関連する、来年以降の注目の法改正等はありますか?

非正規雇用の労働契約の簡素化や柔軟性(企業を跨いだ人材シェアへの対応)について。非正規雇用者は、複数の企業での勤務が当たり前だが、それに法律が対応しきれていない。

Q:個人的に注目している直近のキーワードはありますか?

BYOD

Q:今年一番のおすすめ本をお教えください(※DX観点でなくても結構です)。

「ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか」


染谷剛史氏のインタビュー記事はこちら

【教育業界】

株式会社リクルートマーケティングパートナーズ BtoB事業責任者 池田 脩太郎氏

Q:いまご自身の業界のDX進行スピードは5点満点中何点でしょうか?

4点

Q:コロナ禍でDXが進んだ部分はあるでしょうか?

リクルートマーケティングパートナーズが提供する「スタディサプリ」では、コロナ禍(4~9月)において、新たに約43万名が自治体経由で利用開始されております。教育業界では、コロナの影響を受けてオンライン学習サービスの自治体経由・学校単位での導入が加速度的に進み、リアルの学校現場とオンライン学習のハイブリッド化が進んでいると捉えています。

Q:DX観点で、ご自身の業界全体に期待することは何でしょうか?

DXを通じて先生の業務が効率化され、先生が本来担うべき役割にフォーカスできるよう進化することで、先生が生徒に向き合う時間の最大化が実現されることを期待します。

Q:DXが進むことにより、ご自身の業界ではどんな未来が考えられるでしょうか?

生徒の学習や先生の校務だけでなく、生徒一人ひとりに最適な進路選択や主体性育成についても、トータルで、デジタルがサポートする時代になると考えています。「スタディサプリ」は来春から、進路選択・学習・主体性育成を一気通貫、デジタルで管理できる環境を提供する新サービス「スタディサプリfor SCHOOL」を提供開始予定で、すで既に450超の高校で実証導入いただいております。

Q:ご自身の業界に関連する、来年以降の注目の法改正等はありますか?

GIGAスクール構想

Q:個人的に注目している直近のキーワードはありますか?

5G

Q:今年一番のおすすめ本をお教えください(※DX観点でなくても結構です)。

「テクノロジー思考 技術の価値を理解するための『現代の教養』」


池田脩太郎氏のインタビュー記事はこちら

【エネルギー業界】

ENECHANGE株式会社 代表取締役CEO 城口 洋平氏

Q:いまご自身の業界のDX進行スピードは5点満点中何点でしょうか?

1点

Q:コロナ禍でDXが進んだ部分はあるでしょうか?

対面があたり前だったエネルギー業界でもテレビ会議が普通となり、遠方の取引先とも距離感を感じることなく打ち合わせや提案ができるようになりました。また、テレワークが進んだことにより、電力会社の切り替え申込もオンライン利用が増え、ウェブ受付システムを見直すなどDX化が進んでいるように感じます。

Q:DX観点で、ご自身の業界全体に期待することは何でしょうか?

ウェブ系システムへの投資拡充が進むことで、エネルギーデータの利活用を最大化できる当社のシステム導入が進むことです。エネルギー業界全体のDX化が進むことが、脱炭素社会の実現につながり、消費者メリットも増えると考えています。

Q:DXが進むことにより、ご自身の業界ではどんな未来が考えられるでしょうか?

エネルギー産業全体の効率化

Q:ご自身の業界に関連する、来年以降の注目の法改正等はありますか?

電気事業法が今年改正され、来年度以降順次新しい制度が施行されます。
中でも2022年度に施行予定の電力データ開放には注目しています。

Q:個人的に注目している直近のキーワードはありますか?

電気自動車
VPP(バーチャルパワープラント)関連


Q:今年一番のおすすめ本をお教えください(※DX観点でなくても結構です)。

「世界標準の経営理論」


城口洋平氏のインタビュー記事はこちら

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